浜松天狗張子は、浜松天狗屋の代表作です。
旧浜松市の一部で伝わるお話「天狗の子供」から生まれました。
「天狗の子供が遊びに来た場所には人が集まる。」という話から人を招く縁起物として作製。
揺らすと鼻がたれるため、「鼻たれる」が「放たれる」とも解釈され、「内に秘めたエネルギーの解放」や「インスピレーションの象徴」として、物作り関係の方にも人気です。
また天狗は、能楽などでは悪魔を払い、山岳信仰では山の神と崇められる事から、魔除けや守り神としても効果があると言われています。
浜松の民芸品「張り子」
浜松天狗張子は、浜松で昔から愛される民芸品「張り子」の技術を主として作製しています。
そもそも張り子とは、和紙で作った中が空洞の置物。
張り子と聞いて、ピンとこない方も多いかと思いますが、ダルマや招き猫、張子の虎、赤べこ、正月飾り、干支物などなど、案外身近にあるものなんですよね。
浜松のアイコンとしての「天狗」
天狗をモチーフにしたのは、「天狗の子供」の他、浜松に多くの天狗の話が残っていたからです。
平成の大合併で浜松はとても大きくなりましたが、合併後の浜松を表す1つのアイコンとなると考えています。
かつて、浜松を含む遠州地方(静岡県西部)は、遠江国(とおとうみのくに)と呼ばれていました。
もともと遠江国は「遠江天狗」の群生地。
全国区の天狗も多く、東京は秋葉原の地名の元となる、天竜区秋葉山の天狗(秋葉三尺坊)は、2大火伏せの神の1人。京都の愛宕山に並びます。
秋葉山と同じエリアである春野町には世界一大きな天狗面は、浜松で有名な観光スポットでもあります。
また 湖北五山の1つ、臨済宗方広寺派の大本山「方広寺」に伝わる「奥山半僧坊」も、「海渡しの天狗」としてとても有名です。
浜松の風土を生かした制作
張り子は郷土玩具とも呼ばれ、その土地の風土を生かして作る事が多いです。
張り子製作には「乾かす」という工程が多くありますが、晴れの日が多く、「遠州の空っ風」とあるように、風がよく通るこの土地は、張り子作りにとても適しています。
「だから今も浜松に張り子文化が残っているんだなあ」と、急に普遍性が出てきてワクワクしました。
また、張り子の下地材には、貝殻の粉末を混ぜた「胡粉」を使います。
浜名湖では昔、今よりたくさんの貝が採れていたので、当時はその貝殻を使っていたのかもしれません。
製作過程から、町の風土や当時の暮らしをイメージできるのも郷土玩具の面白さかと思っています。
古来は子供の玩具としてあった郷土玩具が、こんにち縁起物として扱われるのは、伝承や言葉遊びなだけでなく、郷土玩具の背景にある風土から、八百万の神と共に生きる日本人特有の価値観なのかもしれません。
最後に
浜松には、様々な場所に様々な文化があり、様々な時代に様々なドラマがある面白土地です。
浜松の魅力をたくさん詰め込んだ「浜松天狗張子」は、
「100年後や1,000年後の浜松の人達が、郷土の歴史に興味を持つきっかけになったらロマンがあるな!」という思いから制作しました。
これからも、「郷土の歴史を楽しみ、今と未来にワクワクを届けられる物作り。」をしてまいりますので、今後とも浜松天狗屋をよろしくお願いいたします。
おわり